カギを握っている転職エージェント

実を言えば、取材側としては、就職するときには「やはり正社員の方がいいのではないか」と大いに迷った社員もいたのではないか、リスクを取って「5年間の有期雇用」という働き方を選ぶ一大決心をしたという話も聞けるのだろうか、と事前に想像していたのだが、違っていた。

肩に力が入っているわけでもなく、「正社員でないことは気になりませんでしたよ」と淡々と答える社員たちばかりであることに驚かされた。 若い世代の一部の意識はここまで変わってきているのだ。
化学の道に進もうと思ったのは高校時代だった。 分析に興味を持ち、当時から化学の専門雑誌を読みふけった。
「将来は企業か大学で化学の研究をやりたい」と考え、京都大学の工学部工業化学科に入学。 研究室では蛍光近接場走査型の光学顕微鏡を用いた表面分析に取り組んだ。
先端的な材料分析の手法を学べることは、面白かった。 大学院修士課程に進むときは「院に進もうか、就職しようか」と迷った。
研究室を通じて就職活動をしてみたが、教授から紹介された会社での仕事は自分のイメージに合わない。 そこで自力で探し始めた。
化学には確かに興味があったが、これから先の数十年、自分の道をそこに限定されてしまうことに疑問を持ち始めていたからだ。 もともと理系とはいえ文系分野にも興味があったKさんは、「もっとほかの分野も知りたい。
経済やビジネスが絡んだ世界も面白そうだ」と考え、金融関係の企業や新聞社も回ってみた。 しかし、最終的には大学院進学に決めた。
現在、Aグループ全社で導入されている購買システムの保守・改修に携わっているKさん。 かつては京都大学の大学院研究室に通い、白衣をまとって化学の実験に没頭していた。

いま、こうしてITの世界で働いていることは、大学院生だった当時は想像もできなかったという。 AーT新卒特定派遣の働き方をたまたま知ったKさんは、会社説明会で話を聞き、「ここだ」と思ったという。
「でも、結局、研究室の生活が合わなかったんですよ」と、Kさんは当時を振り返る。 「続けるべきか、やめるべきか」で気持ちが揺れた。
一度選んだ道を途中で方向転換することに抵抗感はあったが、「将来を考えたとき、自分自身が一番興味を持っているのはどこなのか。 やはり、それを選んでチャレンジしよう」と心を決めた。
やっと見つけた、自分のなりたいもの。 それはIT技術者だった。
大学院をリタイアしたという事情から選択肢は決して多くなかったが、就職先を探してIT系企業をいくつか回った。


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